B-42:AIを一度試して、やめた社長へ。続かなかった理由は、AIの性能ではありません
AIを一度試して、いまは利用していない。そういう会社は、まだ使ったことがない会社とは、止まっている理由が違います。
続かなかった理由は、AIの性能ではありません。期待の持ち方です。やめた理由は4つに分かれます。どこでやめたのかを見分けるところまでをお伝えします。
「試したが、いまは利用していない」は、使ったことがないのとは違う
「AIは使っていますか」と聞くと、「試してみたけれど、いまは利用していない」という答えが、相談の場ではよく返ってきます。使ったことがない、と答える方より、こちらのほうを私はよく聞きます。
数字で見ると、中小企業でAIを導入しているのは20.4%、検討中が18.6%です(中小企業基盤整備機構が2026年3月に公表した調査)。ただ、この調査には「試したが、やめた」という選択肢がありません。検討中と答えた会社の中に、試して利用をやめた会社が混じっている。私はそう見ています。
試したことがあるなら、まだ使っていない会社が止まっている理由(何に使えばいいか思いつかない、お金をかけられない)は、通り過ぎています。使っていない会社の話は、こちらの記事に整理してあります。
「B-38:AIを、まだ誰も使っていない会社へ。止まっている理由は、AIに詳しくないからではない」
やめた会社が読み直す記事は、初めての人とは違います。同じ入口から入り直すと、また同じ理由でやめることになります。
やめた理由は、4つに分かれる
聞いていくと、4つに分かれます。世の中で決まっている区分ではなく、経営者の方々から聞いた話を整理した、当社の見方です。
- 答えを出してくれると思っていた
- 毎回、一から説明するのが面倒だった
- 使う場面が無かった
- 怖くなった
当てはまるのは、たいてい2つです。先に引っかかったほうから見てください。
答えを出してくれると思っていた
聞けば正解が返ってくる道具だと思って使い始め、返ってきた答えが間違っていたり、情報が古かったりして、信用できなくなった。やめた理由として、よく聞くのはこれです。
AIは、答えを出す人ではなく、壁打ちの相手です。答えを出すのは自分。そう思い直すと、間違った答えが返ってきても困りません。間違いに気づくのは、自分の仕事だからです。
「B-18:AIの答えが毎回違って、どれを信じてよいかわからない。AIは壁打ち相手で、決めるのは自分」
毎回、一から説明するのが面倒だった
会社の事情を説明しないと、まともな答えが返ってこない。それを毎回やるのが面倒で、自分でやったほうが早いと、利用をやめた。
これは性能ではなく、段階の話です。AIの使い方には、前の話を覚えていてもらう段階、自分の決まりを書いて渡す段階があります。一問一答のまま、次の段階を知らずにやめた形です。しかも、次の段階までは無料版で上がれます。
「B-37:経営理念を、AIに教えていますか? ひとりで使っていても、社員に広げても、次にやることは同じ」
「B-40:AIに課金するか迷っている社長へ。課金して変わるものと、変わらないもの」
使う場面が無かった
試してはみたが、日々の仕事のどこで使えばいいのかわからないまま、利用しなくなった。
これは、AIではなく、仕事の棚卸しの話です。何から始めるか。自社のどの業務が向いているか。この2本です。
「B-17:AIで何をすればいいか、思いつかない社長へ。先に決めるのは使い道ではなく、いま困っていること」
「B-20:うちの会社では、AIで何ができるのか。業種ではなく、業務で探す」
怖くなった
社内の情報を入れていいのか。出てきたものを信じていいのか。不安になると、使う度に気になって、そのうち利用しなくなる。
何に気をつければいいか。どこまで入れてよいか。線が引けると、怖さは残っても、利用できるようになります。
「B-19:AIに情報を入れるのが心配な社長へ。線は「社外に漏れても困らないか」で引く」
「B-39:生成AIに個人情報を入れてよいか。範囲は、あとから広げられます」
どれも、AIの性能の話ではない
4つを並べると、共通するものがあります。どれも、AIに何を期待して使い始めたか、という話です。
答えを期待した。覚えていてくれることを期待しなかった。場面を決めずに期待した。線を引かずに不安だけを持った。やめた理由は、道具ではなく、期待の持ち方にあります。
だから、道具を替えても、同じ理由でやめます。別のAIを試してみたが、やはり続かなかった、という話も聞きます。替えるのは道具ではなく、期待の持ち方です。
再開するなら、自分で触らない道もある
やめた理由がわかったら、その理由の記事から入り直してください。それが、この記事の使い方です。
ただ、もう一度自分で触るのが重い、という方もいると思います。その場合は、担当者に任せて、社長は決めるものだけを持つ、という道があります。任せてよいことと、社長にしか決められないことの線は、こちらの記事にあります。
「B-41:AIの導入を担当者に任せた社長へ。任せてよいことと、社長にしか決められない4つ」
どちらの道でも、決めることは社長に残ります。何のために使うのか。それだけは、担当者にもAIにも決められません。
筆者の余談
私も、やめています。半年ほど前まで、無料版を一問一答で使っていました。返ってくる答えの正確さや、情報の古さに不満があって、使わなくなっていました。本文の4つで言えば、答えを出してくれると思っていた、に当たります。ただ、それだけではありません。私の場合は、AIの進化待ちでもありました。もう少し賢くなったら、また使おう。そう思って、利用をやめていました。
進化は、実際に来ました。2026年5月に有料版を本格的に使い始めたとき、モデルの賢さは半年前とは別物でした。ここは、本文の「性能の話ではない」と少し違います。性能への不満は、本当だったのです。
ただ、私を再開させたのは、進化ではありませんでした。知り合いの社長です。ITは苦手だとご本人が言う年配の社長が、音声入力でAIに話しかけて、仕事で使いこなしていた。キーボードも打たない。それでも、使えている。私が進化を待っている間、その社長は同じAIで仕事をしていたのです。待っていたのは、私だけでした。
そこから有料版を本格的に使い始めました。最初に任せたのは、苦手だった役所の書類です。
進化待ちで利用をやめている方へ。待っていた進化は、私の感覚では、もう来ています。利用しない理由は、もう性能ではありません。
この記事のまとめ
- 試してやめた会社は、使ったことがない会社とは、止まっている理由が違います
- やめた理由は4つ。答えを期待した/説明が面倒/場面が無い/怖くなった
- どれもAIの性能ではなく、期待の持ち方の話です
- 道具を替えても、同じ理由でやめます。替えるのは、期待の持ち方です
- 自分で触り直すのが重いなら、担当者に任せる道もあります