B-18:AIは「壁打ち相手」であって、答えを出す人間は自分だ —複数AIに同じ質問をして気づいたこと
答えを出すのは、AIではなく人間
複数のAIに同じ質問をして気づいたこと。AIへの役割分担と、最後に判断するのは誰かという話。
「ChatGPTに聞いたら、こう言っていた」最近、経営者の方とお話しすると、こんな一言を耳にする機会が増えました。AIを使うこと自体は、とても良いことだと思います。ただ、その使い方によっては、かえって判断が鈍くなってしまうことがある。今回はそんな話をしたいと思います。
「このAIは何でもできる」は、本当か?
ChatGPT、Claude、Gemini、Copilot。今や無料で使えるAIツールが何種類も存在します。それぞれに得意なことがあり、使い勝手も少しずつ違います。
「どれが一番いいんですか?」とよく聞かれますが、正直に言うと、どのAIも「何でもできる」ように見えて、実は万能ではありません。
文章を書かせると流暢。アイデアを出させると次々と案が出てくる。質問すると丁寧に答えてくれる。そう見えるのですが、大事なのはその中身の「正しさ」や「自社への適合度」です。AIが出してくる答えは、あくまで「もっともらしい回答」であって、「あなたの会社に最適な答え」ではありません。
この前提を持っておくだけで、AIとの付き合い方がぐっと変わります。
複数のAIに同じ質問をすると、なぜ迷うのか
「複数のAIに同じ質問をして、いいとこ取りをすればいい」という考え方があります。一見、合理的に聞こえます。ただ、実際にやってみると、こういうことが起きます。
AIその①「この方向性で進めるべきです」
AIその②「まずは別のアプローチから考えるべきでしょう」
AIその③「どちらにも一長一短があります。状況によります」
全員が違う答えを返してくる。しかも、どれも自信満々に。
これは「どのAIが正しいか」という問題ではなく、AIがそれぞれ異なる学習データと設計思想を持っているからです。同じ質問でも、強調するポイントが違う。だから答えが変わる。「どれが正しいの?」と迷い始めた瞬間、あなたはすでにAIに振り回されています。
船頭多くして、船が山に登った話
少し前のことですが、私自身もやらかしました。
あるサービスの企画を見直そうと思い、複数のAIに「この企画、どう思いますか?」と聞いて回ったのです。
最初は「なるほど」と思えるフィードバックが返ってきました。ところが、AIを変えるたびに指摘のポイントが変わる。「ターゲットを絞るべき」と言われたかと思えば、「もっと広くすべき」とも言われる。「価格設定が高い」と言われた翌日に「この価格帯で差別化できる」とも言われる。
気がついたら、最初に自分が持っていたアイデアの軸が、どこかへ消えていました。
その後、1週間ほど答えが出ないまま悩み続けました。そしてある日、ふと思ったのです。「私はなんで起業したんだっけ?」
原点に立ち返ったとき、「イオアートらしい企画とは何か」が自然と見えてきました。AIはその答えを一度も教えてくれませんでした。当たり前です。私の起業の動機も、会社の歴史も、AIは知らないのですから。
判断を委ねすぎた先に待っているのは、迷走です。
※AIと経営理念については、こちらの記事もご参照ください。「B-04:AIを使いこなせる会社と、そうでない会社の違いは何か?—経営理念とAI活用の意外な関係」
AIへの役割分担。企画・情報収集・壁打ちで分ける
この体験から学んだのが、AIにも「役割分担」が必要だということです。人間のスタッフに仕事をお願いするとき、「Aさんには数字の集計」「Bさんには文章の作成」と役割を分けますよね。全員に同じ仕事を頼んで、全員の意見を聞いて、どれを採用するか悩む。そんな使い方はしないはずです。AIも同じです。
ChatGPTやClaudeに「こんな方向性を考えているが、穴はないか」と聞く。答えを求めるのではなく、自分の考えを整理する道具として使う。
PerplexityやGeminiなどWeb検索機能付きのAIに「最新の動向を調べて」と頼む。事実確認や業界情報の収集に絞って使う。
下書きを見せて「読みにくい箇所はないか」「もっと伝わる言い方はないか」を確認する。添削・推敲の相手として使う。
同じAIに何役もやらせようとするから迷う。聞く目的を決めてから、AIを使う。これだけで、AIとの付き合い方がぐっと楽になります。
複数のAIに意見を聞いて迷走した経験を振り返ると、もうひとつ気になることがありました。どのAIも、自信満々に答えてくるのです。
人間のスタッフなら、「これは正直、自信がないんですが……」とか「私の専門外なので、確認してみます」と言ってくれます。ためらいや曖昧さが、言葉や態度ににじみ出る。
AIにはそれがありません。正確な情報でも、あやふやな情報でも、同じトーンで、同じ丁寧さで返ってきます。
だから「AIがこう言っていたから大丈夫」という判断は、少し危ない。AIの回答はあくまで「出発点」であって、それが自社の状況に合っているかどうかを判断するのは、経営者であるあなた自身の仕事です。AIを信頼しすぎず、でも怖がりすぎず。道具として、うまく手なずけてほしいと思います。
最後に決めるのは、経営者であるあなた自身
AIは、とても便利です。アイデアを整理したり、文章を直したり、知らなかった視点を提示してくれたりする。私も毎日のように使っています。ただ、AIが教えてくれるのは「こういう考え方もある」という材料であって、「あなたの会社はこうすべき」という答えではありません。
最終的な判断。どの方向に進むか、何に投資するか、どの提案を採用するかは、経営者であるあなた自身が下すものです。AIはその判断を助ける道具であって、判断そのものを代わりにやってくれる存在ではない。「AIに聞いたらこう言っていたから」ではなく、「AIに聞いて、こう考えた」。この違いを、ぜひ意識してみてください。AIは優秀な壁打ち相手です。でも、コートに立つのはあなたです。
この記事のまとめ
- AIはどれも「万能」ではなく、設計や学習データの違いで答えが変わる
- 複数のAIに同じ質問をすると迷走しやすい。判断を委ねすぎないこと
- AIにも役割分担を。企画・情報収集・壁打ちで使う目的を分ける
- AIは自信満々に答える。正確さの判断は、人間側の仕事
- 最後に決めるのは、経営者であるあなた自身