B-41:AIの導入を担当者に任せた社長へ。任せてよいことと、社長にしか決められない4つ
AIを担当者に任せた社長は、間違っていません。
任せてよいことと、社長が持つことの線引き。そして、担当者から上がってくる質問で、その線を見分ける方法をお伝えします。
社長とAIの付き合い方は、2通りに分かれる
社長がAIとどう付き合っているかを見ていると、2通りに分かれます。
- 自分が率先して使う社長。自分で試して、良さも限界も手で覚えている。社員に「使いなさい」と言う前に、使う姿を見せている。この形は「B-21:社長だけがAIを使っている会社へ。社員に広げるのは、ルールではなく、一緒に試すところから」でお伝えしました。
- 担当者に回せる社長。若い社員やIT担当に任せて、自分は使っていない。使う時間がない、あるいは、任せたほうが速いと判断した。
この記事は、2つ目の社長に向けて書いています。
任せた判断は、間違っていません。ITの担当を置くのと同じで、道具の扱いは、得意な人に任せたほうが速い。ただ、任せたまま何も決めていないと、担当者は、決まっていないことを自分で決めます。その結果が社長の思っていた形と違っていても、担当者を責められません。決めていなかったのですから。
「ITのことは担当に任せてある」という社長に、把握しておくことが3つある、と「B-01:社長はどこまでITを理解すべきか?」で書きました。AIでも同じです。
任せてよいこと
どのAIを使うか。どう聞けば、良い答えが返るか。画面の操作、設定、新しく増えた機能。ここは覚える量が多く、変わるのも速い。担当者に任せてよいところです。
画面の手順は、いまはAIそのものに持たせられます。担当者が覚え続ける必要すら、なくなってきました。この線引きは「B-36:IT担当者に覚えてもらうことが増えて、回らない会社へ。手順はAIに任せ、「なぜ」だけ人に残す」でお伝えしています。
担当者から「どれを使いますか」「どう設定しますか」と聞かれたら、「任せる」で足ります。ただし、決めていないから任せるのではなく、任せると決めたから任せる。言葉は同じでも、担当者の動きが変わります。
社長にしか決められない4つ
見分け方は、担当者から上がってくる質問にあります。「どうやりますか」は、任せてよい質問。「やっていいですか」「何のためですか」は、社長が答える質問です。後者は4つに分かれます。
① 何のために使うか
担当者の質問=「AIで、何をやればいいですか」。
答えは、道具自体にはありません。時間を空けるためか、仕事の質を上げるためか、社員が辞めても回るようにするためか。会社が何のためにあるかに、目的は従います。目的を決めるのは、会社の考え方を持っている人です。理念とAIの関係は「B-04:経営理念が、まだ言葉になっていない社長へ。AIに教えるものが無いと、答えはどこの会社とも同じになる」をご覧ください。
② 何を入れてよいか
担当者の質問=「お客様の名簿を入れていいですか」「取引先の資料を読ませていいですか」。
線を引くのは社長です。線の位置は料金プランでは決まらず、情報を預けてくれた相手が決めています。範囲は、あとから広げられます。「B-39:生成AIに個人情報を入れてよいか。範囲は、あとから広げられます」に、線の引き方と広げ方を書きました。
③ 課金するか
担当者の質問=「有料版にしていいですか」。
この質問は、上がってきにくい質問です。担当者は言い出しにくく、個人の無料版に会社の情報を入れている状態が、そのまま続きます。会社で入れるなら無料版のままにしない。課金して変わるのは「どれだけ」で、使い方の段階は変わらない。1か月だけ試す、と決めるのは社長の仕事です。「B-40:AIに課金するか迷っている社長へ。課金して変わるものと、変わらないもの」に整理しました。
④ 何が変わったかを、どう評価するか
担当者の質問=上がってきません。代わりに「使っています」の報告が来ます。
評価するのは、使ったかどうかではなく、何が変わったか。かかる時間、出てくるものの質、担当者が自分で解決できた数。B-21 でお伝えした評価の見方は、社長が使っていなくても、そのまま使えます。何を評価するかを決めていないと、報告は「使っています」で止まります。
決めずに任せると、こうなる
4つが決まっていないと、担当者が自分で決めることになります。どう決まるかは、担当者の性格しだいです。
- 目的がない。便利な作業から順に置き換わり、空いた時間は別の作業で埋まります。
- AIを利用する範囲がない。慎重な担当者は何も入れずに終わり、大胆な担当者は入れすぎます。
- 課金するかが決まっていない。個人の無料版に、会社の情報が入ったままになります。
- 導入前後の評価がない。「使っています」の報告が続き、変わったのかどうかが誰にもわかりません。
どれも、担当者のせいではありません。決まっていなかったのです。
📌 任せてよいのは「どうやるか」。社長が決めるのは「何のため・何を入れる・課金するか・どう評価するか」
担当者の質問を、この2つに仕分けるだけで、線は引けます。
社長がやること
- 4つを紙1枚に書いて、担当者に渡す。A4で一枚あれば足ります。
- 担当者の質問を仕分ける。「どうやるか」は任せる。「やっていいか」「何のためか」は決める。
- 月に1回、「何が変わったか」だけ聞く。使ったかは聞きません。
「任せてある」と「決めたうえで任せている」の差は、この紙1枚です。
筆者の余談
私は、お客様の会社では担当者の側に座ることが多い。社長と一緒にAIを入れる仕事でも、手を動かすのは私です。
そこで見えるのは、4つが決まっている会社は速い、ということです。「何のため」が決まっていれば、どのAIをどう設定するかは、こちらで決めて進められます。決まっていないと、聞きに戻る。聞きに戻れる相手なら、まだよいのです。決まっていないとわかると、こちらで決めてしまいそうになる。その線は、越えないようにしています。道具の話は私が決めてよくても、会社の情報をどこまで入れるか、課金するかは、私の会社の話ではないからです。
担当者が社員なら、なおさらです。社長に聞きにくいから、自分で線を引く。慎重な人は何も入れずに終わり、大胆な人は入れすぎる。本文で書いたとおり、どちらも担当者のせいではありません。
任せると決めた社長に、私が頼みたいのは4つだけです。紙1枚で渡してもらえれば、担当者は道具のほうに集中できます。
この記事のまとめ
- AIを担当者に任せた判断は、間違っていません。ただし、決めることが4つ残ります
- 道具の選定・操作・手順・試し方は、任せてよい
- 社長にしか決められないのは、何のために・何を入れてよいか・課金するか・何が変わったかの評価
- 担当者の質問を「どうやるか」と「やっていいか」で仕分ける。前者は任せ、後者は決める
- 4つを紙1枚で渡し、月1回「何が変わったか」だけ聞く