B-44:AIで何が変わったか、わからない社長へ。時間では測れない。月に1回、聞くだけ
AIは入れた。使い道も決めた。担当者からの報告は「便利です」だけで、何が変わったのかは見えていない。そういう会社は、使っていない会社とも、使い道を決めていない会社とも、止まっている場所が違います。
何が変わったかを、時間で測ろうとすると外れます。社長が月に1回聞く3つと、聞く前に控えておく1行をお伝えします。
「便利です」の報告では、何もわからない
担当者や社員に聞くと、「便利です」「助かっています」と返ってきます。嘘ではありません。ただ、それで会社の何が変わったのかは、社長にはわかりません。
報告が無いのは、担当者の怠慢ではありません。何を報告すればよいかが、決まっていないからです。「AIで何が変わった?」と聞かれても、答え方が決まっていなければ、感想しか返せません。
商工中金が2026年3月に公表した中小企業の調査では、AIを積極的に使っている会社と、そうでない会社とで、導入後の課題として差が大きく開いたものに「効果が測定できない」がありました。使っている会社ほど、測れないことに困っています。使い方の問題ではなく、見方の問題です。
使い道をまだ決めていない段階の話は、こちらの記事に整理してあります。この記事は、決めた後の話です。
「B-43:AIを使っているのに、仕事が速くならない社長へ。分かれ目は、浮いた時間の使い道」
時間で測ると、外れる
まず思いつく測り方は、時間です。「何時間減ったか」。ところが、これが当てになりません。理由は2つあります。
- 減った時間は、目の前の仕事に戻ります。2026年に公表された日本の会社員の調査では、AIで時間が減ったと実感している人は4人に1人でした。減った時間の大半は、そのまま次の仕事に回っています。空いた席に、待っていた仕事が座る。だから、仕事の量は変わらず、減った実感も残りません。
- 本人にも、わかりません。AIが出したものを確かめる時間は、感覚に残りません。米国の研究機関の実験では、AIを使った作業が遅くなっていたのに、本人は速くなったと感じていました。担当者に「何時間減った?」と聞いても、正しい答えは出てきません。
時間は、減ったかどうかを本人が知らず、減っても戻ってしまう。だから、時間で測ると外れます。測るのは、時間ではなく「何が変わったか」です。
聞くのは、月に1回、3つだけ
数字は要りません。月に1回、担当者に3つ聞いて、言葉で答えてもらいます。
先月、新しくAIに任せた仕事と、任せるのをやめた仕事。任せる範囲が広がっているか、止まっているかが見えます。
使い道として決めておいた仕事が、実際に進んだか。進んでいなければ、空いた時間は別のところへ流れています。
AIが出したものをそのまま使った場面が無かったか。確かめる人が決まっていれば、判断は人に残っています。
3つとも、答えは一言で済みます。「見積書の下書きを任せた」「決めていた棚卸しが1回進んだ」「私が全部見ています」。この3つが毎月そろえば、何が変わったかは見えています。そろわない月があれば、そろわなかった答えが次の月の宿題です。
答えを確かめる仕事が、そもそも人に残っているかどうかは、こちらの記事に書きました。
「B-18:AIの答えが毎回違って、どれを信じてよいかわからない。AIは壁打ち相手で、決めるのは自分」
聞く前に、控えておく1行がある
3つを聞き始める前に、控えておくものがあります。使い始める前の状態です。
「見積書は、社長が半日かけて書いていた」「議事録は、誰も作っていなかった」。こういう1行が無いと、3つの答えを聞いても、比べる相手がありません。「任せた」「進んだ」と言われても、前がどうだったかを誰も覚えていなければ、変わったかどうかは判断できません。
省エネの機器に替えるとき、替える前の月の電気代を控えておくのと同じです。前の額が無いと、下がったのかどうか、判断のしようがありません。AIの場合は、控えるのは数字でなくてよく、1行の文で足ります。
もう使い始めてしまった会社は、今の状態を1行で書いておいてください。そこが起点になります。
3つとも、AIの評価ではない
聞いている3つは、AIの性能を評価するものではありません。評価しているのは、決めたことが実行されたかどうかです。
任せる仕事が止まっているなら、任せてよい範囲が決まっていないのかもしれません。決めた使い道が実行されていないなら、その使い道が、いまの仕事に合っていないのかもしれません。確かめる人がいないなら、確かめる人を決めていないだけです。どれも、直すのはAIではなく、社長が決めたことです。
社長にしか決められないことは、4つに整理してあります。3つ目の答えがそろわないときは、その4つのどれが抜けているかを見てください。
「B-41:AIの導入を担当者に任せた社長へ。任せてよいことと、社長にしか決められない4つ」
決めたことを書いて渡してあるなら、古くなっていないかも見ます。AIに渡した決まりは、渡した日から古くなり始めます。
「B-37:経営理念を、AIに教えていますか? ひとりで使っていても、社員に広げても、次にやることは同じ」
社長がやること
- 使い始める前の状態を、1行で控える。もう使っているなら、今の状態を1行で。数字は要りません。
- 月に1回の日を決める。月末の5分で足ります。担当者に、3つの答えを一言ずつ聞きます。
- そろわなかった答えを、次の月に直す。直すのはAIではなく、任せる範囲・使い道・確かめる人のどれかです。
筆者の余談
私は、役所へ出す書類を作るのが、ずっとおっくうでした。期限ぎりぎりまで手を付けず、毎回、慌てて仕上げていました。
AIを使い始めて、ここが変わりました。仕上がるまでの時間は、5~10倍速くなりました。ただ、それより大きかったのは、取りかかれるようになったことです。AI秘書と一緒なら進められる、と思えると、後回しにしなくなりました。変わったのは、始める日です。
「何時間減ったか」で測っていたら、この変化は見えなかったと思います。私の場合、変わったのは時間ではなく、放置していた仕事でした。月に1回、自分に聞くとしたら、「先月、放っておかずに済んだものは何か」です。
この記事のまとめ
- 「便利です」の報告で終わるのは、聞き方が決まっていないからです
- 時間で測ると外れます。減った時間は戻り、本人にもわかりません
- 月に1回、3つだけ聞く。何を任せたか/何が進んだか/誰が確かめたか
- 聞く前に、使い始める前の状態を1行で控えておきます
- 3つはAIの評価ではなく、社長が決めたことが実行されたかの確認です