B-17:AIって結局、何から始めればいい? —中小企業経営者のためのAI活用入門と実例
AI活用の始め方
中小企業経営者のためのAI活用入門と実例。難しい話は抜きにして、最初の一歩をお伝えします。
「AIって、結局何に使えばいいんですか?」経営者の方とお話しすると、最近とくによくこの質問をいただきます。メディアではAIの話題が毎日のように流れ、「乗り遅れてはいけない」という空気も漂っている。でも実際に何から始めればいいのか、よくわからないまま時間だけが過ぎていく。そういう方は、決して少なくありません。
今回は、難しい話は抜きにして、私自身がAIを使い始めたときの体験と、支援現場で見てきたことをもとに、「最初の一歩」をお伝えしたいと思います。
私がAIを使い始めたきっかけは、役所の書類でした
正直に言います。私は、役所や行政機関に提出する書類を書くのが、とても苦手です。
どの書類をどこに出せばいいのか。どの欄に何を書けばいいのか。数年前まで、こういった疑問は自分でさまざまなサイトを調べて解決していました。それなりに時間がかかりましたし、「これで合っているのかな」という不安が残ることもありました。
ところが今は、AIに「〇〇の手続きに必要な書類を教えてください」と聞くと、必要書類の一覧から書式の説明まで、ほぼ一発で答えが返ってきます。以前なら数時間かけていた情報収集が、数分で終わる。これは正直、驚きました。
「こういう使い方があったか」と気づいたのが、私のAI活用の出発点です。
AIが得意なこと、苦手なことを使いながら知っていく
情報収集は「一発回答」が頼もしい
AIは情報収集のスピードアップに非常に強いです。「〇〇制度の概要を教えて」「〇〇と〇〇の違いは何か」「〇〇の手続きに必要なものは」。こういった調査・確認の用途では、検索エンジンでいくつものページを開いて読み比べるより、はるかに速く整理された答えが返ってきます。経営者が日常的に感じる「調べること自体が面倒」という場面に、AIは特に力を発揮します。
ただし、AIは自信を持って嘘をつくことがある
AIは、間違った情報を非常に自信ありげに答えることがあります。「〇〇の法律の条文はこうです」「〇〇の締め切りは〇月です」。こういった回答が、実は古かったり、そもそも存在しない情報だったりする。しかも、正しいときも間違っているときも、答え方のトーンがまったく変わらないのです。
ですから、情報収集においては、複数のAIに同じ質問をしてセカンドオピニオンを取るのは有効な使い方です。複数のAIが同じ答えを返してくるなら信頼度が上がりますし、答えがバラけるなら「ここは自分で確認が必要」という判断ができます。
情報収集のセカンドオピニオン → 有効。複数のAIで裏付けを取ることで、回答の信頼度を確認できます。
企画・経営判断のセカンドオピニオン → 要注意。「この方向性でいいか」といった問いに複数のAIが異なる正論を返してくると、かえって迷走してしまいます。これについてはB-18でくわしくお伝えしています。
重要な情報は、AIの回答をそのまま信じず、必ず公式サイトや一次情報で裏付けを取る習慣をつけておいてください。
参考資料
「B-18:AIは「壁打ち相手」であって、答えを出す人間は自分だ —複数AIに同じ質問をして気づいたこと」
中小企業経営者が最初に試しやすい3つの使い方
では実際に、何から試せばいいのか。私が支援現場で「これは始めやすい」と感じてきた使い方を3つご紹介します。
「〇〇と〇〇、どちらが自社に向いているか」「〇〇業界の最近の動向を教えて」「補助金の種類と条件を一覧にして」。こういった調査・比較の用途でも、AIは大きく時間を短縮してくれます。ただし重要な情報は必ず公式サイトで裏付けを取ること。AIの回答はあくまで「出発点」です。
行政手続きの確認、契約書や提案書の下書き、メールの文章を直してもらう。こういった「文章まわりの作業」は、AIが最も力を発揮しやすい領域です。「書き方がわからない」「何度書き直してもしっくりこない」という場面がある方は、まずここから試してみると効果を実感しやすいと思います。
「こういう方針を考えているんだけど、抜けている視点はないか」「このアイデアの弱点を指摘して」。自分の思考を整理したり、一人では気づきにくい穴を見つけたりする用途です。深夜でも、相手の都合を気にせず、何度でも問い直せる。そういう使い方ができる道具は、これまでありませんでした。
「何から始めるか」より、「何を解決したいか」を先に決める
AIの使い方を調べると、「まずChatGPTに登録しよう」「Claudeを試してみよう」という情報がたくさん出てきます。ツールの登録自体は数分でできるので、それは問題ありません。ただ、登録した後で「さて、何に使おうか」と考え始めると、多くの場合そこで止まってしまいます。
先に「自分が日常で困っていること」を一つ決めてから、AIを開く。
「提案書の書き出しがいつも時間かかる」「補助金の種類を毎回調べ直している」「議事録をまとめるのが面倒」。なんでも構いません。小さな困りごとを一つ持って、AIに話しかけてみてください。
また、AIをうまく使いこなすためには「何のために使うか」という自社の軸が大切です。ツールの前に目的、目的の前に経営の軸。この順番はAI活用でも変わりません。これについては「B-04:AIを使いこなせる会社と、そうでない会社の違いは何か?—経営理念とAI活用の意外な関係」でくわしくお伝えしています。
私はミステリー小説が好きで、昔から読んでいます。「あの本のあらすじ、どんな内容だったっけ」と思い出せないとき、試しにAIに聞いてみたことがあります。返ってきた答えは。半分くらい嘘でした。存在しない登場人物が出てきたり、犯人が違ったり、そもそもそんな展開は原作にないという内容が、実にもっともらしく書かれている。これは読書好きとしてなかなか衝撃でした。
つまり、AIを使ってミステリー小説を読んだふりで読書感想文を書くのは、かなり危険です(笑)。AIは「それらしい答えを作る」のが得意な道具です。情報の正確さが求められる場面では、必ず自分で確認する習慣を持っておいてください。
この記事のまとめ
- AIは情報収集のスピードアップに強い。ただし嘘を自信満々につくことがある
- 情報収集のセカンドオピニオンは有効。経営判断の複数AI参照は迷走のもと
- 「何から始めるか」より「何を解決したいか」を先に決める
- 小さな困りごとを一つ持って、AIに話しかけてみることが最初の一歩
- AI活用の軸は経営理念にある(B-04参照)