B-06:デザイン・動画編集用パソコンの選び方 —Mac vs Windows、予算別おすすめ構成
社内デザイナー・建築設計・動画編集担当者のためのPC選定ガイド
「デザイナーには、事務用と同じパソコンでいいの?」
使うソフトと用途によって、必要なスペックはまったく変わります。職種・予算・Mac vs Windowsの判断基準を、現場25年の視点で整理しました。
前回の記事(B-05)では、事務用パソコンの選び方をお伝えしました。メモリ16GB・SSD 512GB・Core i5以上が事務用の推奨スペックというお話でしたが、「うちにはデザイナーもいるんだけど、同じパソコンでいいの?」という疑問を持った方もいらっしゃるかもしれません。
結論から言うと、デザインや動画編集・3DCADを使う社員には、事務用とは別のスペックが必要です。ただ、「どう違うのか」「どこまで出せばいいのか」が整理できていないと、オーバースペックで無駄な出費になったり、逆にスペック不足で現場が困ったりします。
この記事では、事務用との違いを3つのポイントに絞って整理したうえで、職種・用途別の選び方、Mac vs Windowsの判断基準、予算別の目安までを実務的な視点でまとめます。
事務用PCと何が違うのか →3つのスペックだけ押さえればいい
デザインや動画編集用のパソコンは、事務用と比べると「高スペック」という印象があります。ただ、何もかもが違うわけではありません。実際のところ、事務用との違いは3つのポイントに集約されます。
GPU(専用グラフィックス)あるかないかが最大の違い
事務用パソコンのほとんどは、CPUに内蔵されたグラフィックス機能(内蔵GPU)で動いています。WordやExcel、ブラウザ、Zoomといった事務用途であれば、これで十分です。
ところが、Adobe CCのPhotoshopやPremiere Pro、AutoCADや3DCADのソフトになると、画面に表示する情報量・処理の複雑さがまったく異なります。内蔵GPUでも動きはしますが、描画がもたついたり、レンダリングに何十分もかかったりと、現場の生産性に直接影響します。
デザイン・動画編集・CAD用のパソコンには、CPUとは別に専用のGPU(グラフィックスボード)が搭載されているものを選ぶ必要があります。これが事務用との最大の違いです。
GPUにはVRAMと呼ばれる専用メモリが搭載されています。Adobe CCや動画編集であれば4GB以上、3DCADや大規模なレンダリングを行う場合は8GB以上を目安にしてください。
メモリは32GB以上、ストレージは1TBを前提に
事務用の推奨メモリは16GBでしたが、デザイン・動画編集用は32GB以上が前提になります。
Adobe CCは複数のソフトを同時に立ち上げることが多く、たとえばIllustratorで作業しながらPhotoshopで画像を開き、Premiere Proで確認する。といった使い方では、16GBではすぐに限界が来ます。Autodesk社のRevit(BIM)やAutoCADも、公式の推奨スペックとして32GBを明記しています。
ストレージは1TB以上のSSDを選んでください。デザインデータや動画ファイルは1ファイルあたりのサイズが大きく、事務用の512GBではあっという間に埋まってしまいます。また、動画編集では書き込み・読み込みの速度もパフォーマンスに影響するため、SSD一択です。
| 項目 | 事務用PC(B-05) | デザイン・動画・CAD用 |
|---|---|---|
| GPU | 内蔵GPUで十分 | 専用GPU必須(VRAM 4GB以上) |
| メモリ | 16GB推奨 | 32GB以上 |
| ストレージ | SSD 512GB | SSD 1TB以上 |
| 予算目安 | 約15万円 | 30万円台〜 |
デザイン用PCが必要な用途、事務用で足りる用途 →まず仕分けする
「デザイン系の仕事をしている社員がいる」といっても、使うツールによって必要なスペックはまったく変わります。まずここを仕分けしておくことが大切です。
Canvaなど軽量ツール中心なら事務用PCで十分
近年、CanvaやGoogleスライドを使ってチラシやSNS投稿を作る会社が増えています。これらはブラウザ上で動くツールで、グラフィックス処理の負荷は非常に軽い。事務用パソコン(メモリ16GB・SSD 512GB程度)で十分動きます。
「デザインっぽい作業をしている」からといって、すぐにデザイン用PCを用意する必要はありません。使っているツールが何かを先に確認してください。
Adobe CC・動画編集ソフト・3DCADは共通スペックで選ぶ
一方、以下のようなソフトを使う場合は、デザイン用のスペックが必要です。
Photoshop・Illustrator・Premiere Pro・After Effectsなど。複数ソフトの同時使用が前提のため、メモリ32GB以上が必須。
DaVinci Resolve・Final Cut Proなど。特にフルHD以上の動画を扱う場合はGPUと大容量メモリが不可欠。
AutoCAD・Revit・ArchiCADなど。Autodesk公式も32GBメモリを推奨スペックとして明記。
上記3カテゴリはGPU・メモリ・ストレージの要件がほぼ共通。用途別に別々のPCを用意する必要はない。
大規模レンダリングが多い建築系はGPUをワンランク上げる
建築設計会社でRevitやArchiCADを使い、さらに大規模な建物のレンダリングやVR・3Dプレゼンテーションを行う場合は、GPUをワンランク上げることを検討してください。
通常の業務(図面作成・中規模モデリング)であれば前述のスペックで十分ですが、複雑な建築モデルのリアルタイムレンダリングになると、VRAM 8GB以上・ハイエンドGPUが必要になる場面が出てきます。自社の業務内容に照らし合わせて判断してください。
デスクトップかノートか →用途で自然に決まる
事務用パソコンでは「ノート一本化」が主流とお伝えしましたが、デザイン・CAD用途の場合は一概にそうとも言えません。
建築・設計のCADオペレーターなど、ほぼ固定席で大型の図面や3Dモデルを扱う場合。同じ予算でより高性能なGPUが選べ、27〜32インチの大型モニターと組み合わせると生産性が大きく上がる。
WebデザイナーやSNS・動画担当など、社内作業が中心ながら外出・打ち合わせの機会もある場合。15〜16インチが性能と携帯性のバランスがよく、実務でもっとも選ばれるサイズ。
📌 デザイン用ノートはサイズ選びが重要
17インチ以上になると性能は上がりますが、重量2kg超えのものも多く、「持ち運べるが持ち運びたくない」という状態になりがちです。購入前に実際に持ってみて、無理なく運べる重さかどうかを確かめることを強くおすすめします。
Mac vs Windows →「職種」で答えは出る
デザイン用パソコンの話になると必ず出てくるのが「MacかWindowsか」という議論です。結論から言うと、使う職種と使うソフトで答えはほぼ決まります。
Macを選ぶべき職種とその理由
Macを選ぶ合理的な理由がある職種は、現場の経験から見ると以下に絞られます。
写真家・フォトグラファー、映像ディレクター・映画監督です。
この職種にとって「発色の正確さ」は仕事の品質に直結します。MacはAppleが独自にディスプレイとOSを一体設計しているため、カラープロファイルの管理精度が高く、プリント・映像出力時の色再現性に優れています。
また、MacにはFinal Cut Pro(映像編集)という強力なMac専用ソフトが存在し、Apple Siliconとの組み合わせで高い処理性能を発揮します。映像制作を本業とする方には有力な選択肢です。
それ以外の職種はWindowsで問題ない
グラフィックデザイナー、動画編集者(YouTube・SNS系)、3DCADオペレーター、社内デザイナーなど、上記以外の職種ではWindowsで問題ありません。
Adobe CCはWindowsに完全対応しており、AutoCAD・Revitなど建築・設計系のソフトはむしろWindows環境での動作確認が取れているケースが多いです。また、同じ予算であればWindowsのほうが高性能なGPUを搭載したモデルを選びやすいという現実的なメリットもあります。
「クリエイターはMacを使う」というイメージは根強いですが、それは発色の正確さが仕事の評価に直結する職種に限った話です。ソフトの対応状況と用途で冷静に判断することが大切です。
iOSアプリ開発だけはMac必須
一点だけ例外があります。iPhoneやiPad向けのアプリを開発する場合は、開発ツール「Xcode」がMac専用のため、Macしか選択肢がありません。社内にアプリ開発担当者がいる場合のみ、この点を考慮してください。
予算別おすすめ構成の目安
30万円台。Adobe CC・動画編集・3DCADの最初の一台
Adobe CCや動画編集ソフト、AutoCAD・Revitなどの標準的な業務用途であれば、30万円台のモデルで十分な性能が得られます。
| 項目 | 目安スペック(30万円台) |
|---|---|
| CPU | Intel Core i7(第13世代以降)またはAMD Ryzen 7 |
| GPU | NVIDIA GeForce RTX 4060(VRAM 8GB) |
| メモリ | 32GB |
| ストレージ | SSD 1TB |
50万円以上。大規模レンダリングまで視野に入れる場合
大規模な建築モデルのレンダリングや4K・8K動画の編集、複数ソフトの同時使用が日常的に発生する場合は、50万円以上のハイエンドモデルを検討してください。
| 項目 | 目安スペック(50万円以上) |
|---|---|
| GPU | NVIDIA GeForce RTX 4070以上(VRAM 12GB以上) |
| メモリ | 64GB |
| ストレージ | SSD 2TB |
ただし、この領域のパソコンは決して安い買い物ではありません。購入前に、自社の業務内容と照らし合わせた比較検討に時間をかけることを強くおすすめします。扱うモデルの規模、レンダリングの頻度、動画の解像度。これらを事前に整理したうえで、根拠を持って選ぶことが、長く使えるパソコン選びにつながります。
私自身、WebデザインやYouTube動画編集のために、デザイン用のノートパソコンをメインで使っています。前回の記事でお話しした「外付け機器だらけで動かせなくなったPC」が、まさにこのデザイン用ノートです。
選ぶときに一番悩んだのがサイズでした。高性能なモデルは17インチが多く、スペックだけ見れば申し分ない。ただ、実際に持ってみると「これは毎日は持ち運べない」と感じました。結局、15インチのモデルを選びましたが、この判断は正解でした。打ち合わせや外出先でも無理なく持ち出せて、社内では外付けモニターにつないで広い画面で作業できる。サイズと性能のバランスが、デザイン用ノートでは特に重要だと実感しています。
カタログのスペックだけでなく、実際に手に持って重さを確かめてから買うことを強くおすすめします。
ちなみに前回お話しした「外付け機器だらけで身動きが取れなくなったPC」ですが、周囲の方から「それ、本当に持ち運べるの?」とよく聞かれます。持ち運べます。いざとなれば。ただ、その「いざ」が今のところ一度も来ていません。(笑)
この記事のまとめ
- まず「使うツールが何か」で事務用PCで足りるかどうかを仕分けする。Canvaなら事務用で十分
- Adobe CC・動画編集ソフト・3DCADは専用GPU・メモリ32GB・SSD 1TBが共通の基準
- MacかWindowsかは職種で決まる。写真家・映像系以外はWindowsで問題ない
- 予算は30万円台から。大規模レンダリングが多い場合のみ50万円以上を検討
- 高額なPCほど購入前の比較検討が重要。根拠を持って選ぶことが長く使えるPCにつながる