B-05:事務用パソコンの選び方と買い時 —Windows 11移行も含めて整理する

中小企業のためのPC選定・更新・OS移行 完全ガイド

「パソコンを買い替えたいけど、何を基準に選べばいいかわからない」

そんな相談が、ここ最近とくに増えています。スペック・リース・Windows 11移行。決める前に整理すべきことを、実務的な視点でまとめました。

きっかけのひとつは、Windows 10のサポートがすでに終了し、まだ移行できていないPCへの対応が急務になってきたことです。もうひとつは、コロナ禍以降のリモートワーク定着で、社員のPCの使い方自体が変わってきたことがあります。そして正直なところ、「なんとなく古くなってきたから」という会社も少なくありません。

でも、パソコン選びをなんとなく進めると、あとから後悔することが多いものです。スペックが足りなくて買い直した、逆にオーバースペックで無駄な出費になった、リースにしたら総額が割高だった。そういう話を経営者の方からよく聞きます。

この記事では、中小企業の事務用PCをどう選ぶか、すでに終了したWindows 10サポートへの対応をどう進めるか、そして購入前に何を決めておくべきかを、できるだけ実務的な視点で整理します。

目次

パソコン選びで失敗する会社に共通していること

失敗するパターンには、いくつか共通点があります。まとめると「決め方がない」ということに尽きます。

「とりあえず安いもの」で選んでしまう

予算重視は当然のことですが、事務用PCを「とにかく安く」だけで選ぶのは危険です。3〜4万円台のエントリーモデルは、起動やExcelの動作は問題なくても、複数のアプリを同時に使ったり、クラウドサービスにアクセスしながら会議ツールを開いたりするだけで、一気にもたつきが出ます。結果的に「遅くて使えない」と1〜2年で買い替えになり、かえって割高になるケースが多いです。

「前回と同じ」で更新してしまう

前回買ったPCが特に問題なかったからといって、同じスペックで更新する会社も多いのですが、5年前のスタンダードモデルは、今の基準で見るとかなり見劣りします。クラウドの利用が増え、Zoomなどのビデオ会議が日常的になった今、必要なスペックの水準は数年前より確実に上がっています。

導入担当者任せで経営判断が入っていない

「PC購入は総務に任せてある」という会社も多いですが、台数が多い場合や、リース・購入の方式選択が絡む場合は、経営者も概要だけは把握しておくべきです。なんとなく「リースのほうが楽そう」でリースにしていたが実は割高だった、という事例は珍しくありません。

事務用パソコン、何を基準に選べばいいか

「どんなPCを選べばいいですか?」という質問への正直な答えは、「用途と台数と予算によって変わります」です。ただ、それだけでは参考にならないので、判断の軸を整理します。

スペックの最低ラインを知っておく

事務用途(Word、Excel、メール、クラウド、Zoom程度)であれば、2026年現在の実用最低ラインは以下のあたりです。

項目 最低ライン 推奨ライン
CPU Intel Core i3(第12世代以降)/ AMD Ryzen 3 Core i5 / Ryzen 5
メモリ 8GB 16GB
ストレージ SSD 256GB SSD 512GB
OS Windows 11 Home Windows 11 Home

ここでひとつ強調しておきたいのがメモリです。8GBでも動きますが、ブラウザのタブを複数開きながらExcelとZoomを同時に使うと、すぐ限界が来ます。社員が「パソコンが遅い」と感じる原因の大半はメモリ不足です。16GBを選んでおけば、数年は安心して使えます。

また、ストレージは必ずSSDを選んでください。HDDは今や論外で、起動だけでなく、あらゆる操作が体感レベルで変わります。

CPUは、Core i3でも十分な場面はありますが、複数アプリの同時利用や大量データを扱う場合はi5以上が安心です。予算が許すなら、CPUよりもメモリを優先して増やすのが、実用的なコスパの良い選択です。

なお、ここで紹介したスペックはあくまで事務用途の目安です。デザインや動画編集を担当するスタッフがいる場合は、求められるスペックがまったく異なります。Mac vs Windowsの選択や予算別の構成については、次回の記事(B-06)で詳しく取り上げています。

デスクトップかノートか

「デスクトップとノート、どっちがいいですか?」も定番の質問です。

デスクトップが向いているケースは、ほぼ固定席で動かない業務、かつ大きな画面が必要な仕事です。設計図の確認、表計算の横長データ、画像や動画の確認作業。こういった用途では、24〜27インチの大型モニターを組み合わせたデスクトップが圧倒的に使いやすくなります。同じ予算でスペックも高いものが選べるため、コストパフォーマンスでも有利です。

ただし近年の主流は、ほとんどの会社でノート一本化に向かっています。背景にあるのは、「社内では大きい画面で使いたい、でも外には持ち出したい」という両立ニーズの高まりです。

今どきの「ノート一本化」運用とは?

社内では大型ディスプレイ+外付けキーボードにノートをつないで使い、屋外ではノート単体で持ち歩くスタイルが定着しています。一台で社内外を完結できるため、データの同期ミスも起きにくく、管理もシンプルです。購入前に外付けディスプレイの接続方式(USB-CまたはHDMI)が対応しているかも確認しておきましょう。

新品・中古・リースの損益分岐点

  • 新品購入:初期費用はかかるが、減価償却・会計処理がシンプル。保証も充実しており、5年以上使う前提なら総コストでも割安になります。
  • 中古PC:法人向けリースアップ品はコスパが良いケースも。ただしバッテリー劣化・保証の短さ・Windows 11動作要件(TPM 2.0)の確認が必須です。
  • リース:月額払いで初期費用を抑えられますが、総額では購入より高くなることが多いのが現実。5年リースで月額5,000円なら総額30万円。同スペックの新品が15〜20万円で買える場面も。定期更新のサイクルを組みたい場合は検討の余地あり。

📌 台数別の目安
5台以下の少数台であれば購入が基本。10台以上で定期更新の仕組みを作りたいならリースの検討余地あり、という考え方が現実的です。

Windows 10サポート終了 →もう待ったなしの状況です

2025年10月14日、Windows 10の延長サポートがすでに終了しました

マイクロソフトがセキュリティ更新プログラムの提供を完全に停止したことを意味します。「まだ動いているから大丈夫」は通用しません。今この瞬間も、Windows 10を使い続けている会社のPCは無防備な状態に置かれています。

  • セキュリティの脆弱性が放置され続ける(発見されても修正パッチが届かない)
  • 業務システムやクラウドサービスの動作保証がなくなる(ベンダーが順次Windows 10を非対応に切り替えている)
  • 情報セキュリティポリシー上の問題(取引先・顧客・金融機関から指摘されるリスク)

大企業との取引では情報セキュリティチェックシートの提出を求められることが増えており、「Windows 10を継続利用」と書いた時点で指摘を受けるケースも実際に出ています。サポート切れのOSは、取引上の信頼リスクにも直結します。

まだWindows 10のPCが社内に残っている場合は、今すぐ対応を

現在使っているPCをWindows 11に移行できるかどうかは、ハードウェアの要件次第です。主な条件はTPM 2.0への対応と、第8世代以降のIntel CPU(またはRyzen 2000番台以降)であることです。2020年以降に購入したPCであれば多くの場合対応していますが、それ以前のモデルでは対応していないケースが多く、その場合はPCの買い替えが必要になります。

移行可否の確認方法

スタートメニューで「PC正常性チェック」と検索してアプリを起動するだけです。「Windows 11を実行できます」と表示されれば移行可能。そうでなければ、買い替えのタイミングです。サポート終了からすでに時間が経過しているいま、できるだけ早く動くことをおすすめします。

購入前に決めておくべき3つのこと

「では早速買い替えを」となる前に、以下の3点を社内で整理しておくと、購入後の混乱を防げます。

何台、誰のために買うかを明確にする

「全社で10台更新」とざっくり決める前に、社員ごとの用途を確認してください。ほぼWordとメールしか使わない社員と、大量のデータ処理や設計ソフトを使う社員では、必要なスペックが大きく異なります。用途別に2〜3パターンのスペックを設定しておくと、無駄なく予算を使えます。

データの移行方法を決めておく

新しいPCに替えたとき、最も手間がかかるのがデータ移行です。個人ごとのPC内にデータが散在している場合、移行に数時間〜丸一日かかることもあります。これを機に、クラウドストレージ(OneDriveやGoogleドライブ)への移行を進めておくと、次回以降の乗り換えが格段に楽になります。

導入後のサポート体制を考えておく

PCを買って終わり、ではなく、セットアップ・設定・トラブル対応をどこに任せるかも重要です。特に複数台を同時に導入する場合は、初期設定だけでも相当な工数がかかります。事前に相談窓口を決めておくことを強くおすすめします。

🖊 筆者より:ノートパソコンを2台持ちにしてわかったこと

実は私自身、デザイン用のノートパソコンをメインで使っています。仕事の快適さを求めて、スタンドと冷却ファンの上にセットしてディスプレイを目線の高さに上げたのはよかったのですが、今度はキーボードが打ちにくくなったので外付けキーボードを接続。気づけばUSBハブの先にHDD2台とスピーカーがつながっており、自分の机からパソコンを動かすのが困難な状態になっていました。

さすがにこれでは持ち運べないと、新たにタッチパネル付きの事務用ノートパソコンを購入しました。外出先での簡単な作業や、お客さまに資料をお見せするときに使っています。「ノートパソコンってこんなに持ち運びが便利だったんだ」と、いまさらながら実感しているところです。

便利に使いこんでいくうちに、気づいたら身動きが取れなくなっている。これ、パソコンの周辺機器に限らず、社内のIT全般でよく起きることです。だからこそ、最初の設計が大事だとあらためて思います。

この記事のまとめ

この記事のまとめコレだけ!1分で復習
  • パソコン選びの失敗は「決め方がない」ことから起きる。用途・台数・予算を整理してから動こう
  • 事務用途の推奨スペックはメモリ16GB・SSD 512GB・Core i5以上。OSはWindows 11 Home
  • ノートが主流。社内では大型ディスプレイに接続、外出時はそのまま持ち出す運用が定着している
  • リースは総額では割高になりやすく、少数台なら購入が基本
  • Windows 10のサポートはすでに終了。まだ使い続けているPCがあれば今すぐ移行可否を確認を
  • 購入前に「誰が何台・データ移行・導入後のサポート」の3点を決めておく
小田朋和
(有)イオアート 代表取締役・IT経営コンサルタント
人情の街として知られる東京都葛飾区を拠点に創業25年以上。中小企業経営者のIT経営をサポート。「売り込まない・中立・わかりやすく」をモットーに、経営者の隣でITを経営の力に変えるお手伝いをしています。行政機関・経営者団体・大学・高校からの講師依頼も多く、「難しいと思っていたITが、楽しく理解できた」という声をいただいています。「社長」よりも、「先生」と呼ばれることの多い25年でした。
まず現状を聞かせてください

「うちはどこから手をつければいい?」
それを一緒に整理するところから始めます

ツールを売り込んだり、いきなり大きな提案をしたりはしません。まず御社の今の状況をうかがって、何が問題で、何から始めるべきかを一緒に考えます。葛飾区で25年以上、経営者の隣でITを見てきたからこそできる、現場に寄り添った相談です。

※葛飾区周辺(足立区・江戸川区・三郷市・八潮市・松戸市など)へは、初回訪問時の出張料も無料(それ以外の地域も対応しています。その場合は、交通費の実費だけご負担ください。)

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