B-40:AIに課金するか迷っている社長へ。課金して変わるものと、変わらないもの
無料版のままで迷っている会社は、お金で止まっているのではありません。
有料版にすると何が変わり、何が変わらないのか。課金する前に見ておく2つのことと、自社がどこにいるかの見分け方までをお伝えします。
「有料版にしようかとは思っている」で、止まっている
先日、創業して数年の経営者の方々に、AIをどう使っているかを聞く機会がありました。返ってきた答えで多かったのは、「無料版のまま。有料版にしようかとは思っている」でした。
使っていないのではありません。使っていて、次の一歩の手前で止まっている。
国の調査では、AIを使っている中小企業は約2割です。
- 使っていない約8割。理由は「B-38:AIを、まだ誰も使っていない会社へ。止まっている理由は、AIに詳しくないからではない」で書きました。
- 使っている約2割。ここでお話を聞いた方々は、こちらです。使い始めて、その先で迷っている。それだけで、多くの会社より先へ進んでいます。
迷っているのは、使うかどうかではなく、どこまで使うか。国の物差しには、そもそも載っていません。
迷うのは、当然だと思います。何が変わるのかがわからないまま、毎月の支払いだけは確実に増える。それでは決められません。
課金して変わるのは、「どれだけ」
無料版と有料版の違いは、大きく分けると次のとおりです。
- 賢い受け答えができるようになる。
- 使える回数の上限がゆるくなる。
- 前の会話を、より長く覚えていてくれる。
- 自分の決まりを、より多く置いておける。
並べてみると、共通していることがあります。どれも、無料版に「無い」わけではありません。無料でも賢く、無料でも覚えています。有料版にすると、その広さが変わる。変わるのは「あるかないか」ではなく、「どれだけか」です。
だから「有料版にすれば、できなかったことができるようになる」と期待して課金すると、たいてい拍子抜けします。前からできていたことが、少し楽になる。実際に起きるのは、それです。
逆に言えば、いまの不満が「回数が足りない」「前の話を忘れてしまう」なら、課金すれば解決します。困っている場所が4つのどれなのかを、先に言葉にしておく。課金する前にやることは、これです。
あわせて、「どれだけ」には入らない違いがあります。入れた内容の扱いです。個人で試している間は、無料版のままでかまいません。会社の情報を入れるようになったら、無料版のままにしない。これは「どれだけ」ではなく、会社で使うなら課金する理由そのものです。扱いの違いは「B-19:AIに情報を入れるのが心配な社長へ。線は「社外に漏れても困らないか」で引く」をご覧ください。
使い方の段階は、課金では上がらない
課金とは別に、見ておくことがあります。AIの使い方そのものの段階です。
次の4段階は、世の中で決まっている区分ではありません。経営者の方々にAIの使い方を聞いてきて整理した、当社の見方です。考え方は1つだけです。毎回の説明が、どれだけ減るか。
主なAIで無料です。
主なAIで無料です。
主なAIで無料です。
複数社員や1人の複数端末で、情報共有して使えます。AIの種類や使い方によって、無料・有料が分かれます。
AIを閉じたあとに何も残らないなら第1段階。前の続きから始められるなら第2段階。毎回同じものを貼っているなら第3段階。貼っていないのに読んでいるなら第4段階です。
ここで見ていただきたいのは、第3段階まで課金が出てこないことです。
第1段階から第2段階へは、何もしなくても上がれます。いまのAIは、たいてい前の話を覚えています。必要なのは、覚えていると気づいて、それを前提に話しかけることだけです。第2段階から第3段階へは、自分の決まりを書き出せるかどうか。時間はかかりますが、課金は要りません。
無料版のままで迷っている方の多くは、第1段階にいます。覚えているとは知らずに、毎回一から説明している。ここで有料版にしても、第1段階のままです。説明の量は変わりません。
課金と段階がつながるのは、1か所だけ
課金の話と、段階の話。この2つは別のものですが、まったく無関係でもありません。つながる場所が1か所あります。第4段階です。
第3段階までは、無料版のままでも行けます。第4段階だけは、選ぶAIによって、無料版でできるものと、有料版でないとできないものに分かれます。決まりを置いておく場所を持っているかどうかが、道具ごとに違うからです。
ここは「どれだけ」ではなく、「あるかないか」の話です。だから、ここまで来ると、課金が段階の条件になります。それより手前で課金しても、段階は動きません。
別のものだからといって、どちらか片方でよいわけでもありません。AIには、モデルと呼ばれる賢さのレベルがあります。その選択と、使う人の指示の仕方。この2つがそろって、初めてAIは会社で使える道具になります。課金は前者に、段階は後者に効きます。だから、順番があるのです。
📌 AIが会社で使える道具になる条件 = AIのモデルの賢さ + 使う人の指示の仕方
課金で広がるのは賢さ。段階で上がるのは指示の仕方。
課金する順番は、小さく試してから
順番を整理します。
- 自社が、どの段階にいるかを見る。
- 困っているのが、4つの「どれだけ」のどれかを言葉にする。
- 無料版のままで上がれる段階まで、先に上がる。
- それでも足りないものが残ったら、そこに課金する。
大きく作り替える前に、小さく試して確かめる。ホームページでも社内のシステムでも、この順番は変わりません。AIは月ごとに始めて月ごとに止められる道具なので、試すのに向いています。1か月だけ有料版にして、変わったことを書き留めてから決める。
1か月たって「楽になった」と感じたことが、4つの「どれだけ」のどれに当たるか言えるなら、課金した意味がありました。言えないなら、変わったのは使い方のほうです。
社長がやること
- いま何段階目かを見る。AIを閉じたあとに何が残るかでわかります。
- 困っている場所を、4つのうちのどれかで言う。
- 課金するなら、1か月だけ。変わったことを書き留めてから、続きを決めます。
決めるのは金額ではなく、順番です。
筆者の余談
私が最初に有料版にした理由は、一定時間に使える回数の制限でした。もう少しで一仕事が終わる、というところで利用の制限がかかる。同じことが何度もあったので、課金することにしました。使ってみて驚いたのは、そこではありませんでした。無料版では選べなかった、モデルの賢さのほうです。本文の言い方をすれば、回数で困って課金したところ、賢さで驚きました。
賢さと言っても、答えが合っているかどうかだけではありません。私が感じたのは、新人社員とベテラン社員に指示をするときの差に近いものでした。新人には手取り足取り言わないと動かないし、少しあいまいに頼むとそこで間違える。ベテランなら「例のアレ、よろしく」で通じる。下のモデルは前者で、上のモデルは後者でした。こちらが渡した決まりに、AIのほうがつまずいて、同じところを回り続けることもあり、上のモデルに替えると、それが目に見えて減りました。無くなったわけではありません。減りました。
ただし、この「察する力」と本文の「段階」は別です。段階は、決まりを書いて渡してあるかどうか。察する力は、渡していないところを汲んでくれるかどうか。ベテランでも、会社の決まりは渡さなければ知りません。中途入社のベテランを思い浮かべてください。腕は確かでも、入った日にはうちのやり方を知らない。渡さなければ、返ってくるのは、あなたの会社のための意見ではなく、一般論として深いだけの意見です。だから、賢いモデルにしても段階は上がらないのです。
こういう社長もいました。「みんながAIを使い慣れたところで一気に料金を上げるのでは?オレはまだ様子見だな」
私も、値上げは不安です。それでも、AIを使うというこの流れは止められないと思っています。だから、いまのうちに使い方に慣れておく。そして、いつ使えなくなっても困らないように、AIに丸投げせず、自分の頭で考え、自分でも実務ができるようにしておく。両方を、同時にやるつもりです。
この記事のまとめ
- 無料版のままで迷っているのは、お金で止まっているのではありません
- 課金して変わるのは、賢さ・回数・記憶・置ける量の「どれだけ」です
- 使い方の段階は、課金では上がりません。つながるのは第4段階だけです
- 課金するなら1か月だけ試して、変わったことを書き留めてから決めます
- 会社で入れるなら、無料版のままにしない