B-31:「IT、任せておいて」と言える社員を育てるには —中小企業のIT担当者、最初の3か月でやること
I社内ITスタッフをどう育てるか?
「詳しい人を探す」のではなく「何をやるかを決めて、動ける環境を整える」。IT担当者を育てるために社長がやるべきことをお伝えします。
「担当者を決めた」だけで安心していませんか。IT担当の兼務がうまくいかない会社に共通しているのは、「何をやってもらうか」を決めていないことです。詳しい人を探す前に、まず決めるべきことがあります。
「なんとなく詳しい社員」をIT担当にした、その後どうなったか
「うちの○○さん、パソコン得意だから、IT担当もやってもらうことにしました」
こういう話をよく聞きます。そしてその数か月後、同じ社長からこんな言葉が返ってくることも少なくありません。
「○○さん、本業が忙しくてIT対応まで手が回らなくて…」
「何をどこまで頼んでいいかわからなくて、結局また私が対応してしまいました」
「○○さんが辞めたら、また誰もわからなくなってしまって」
IT担当の兼務がうまくいかない会社に共通しているのは、「担当者を決めたこと」で安心してしまい、「何をやってもらうか」を決めていないことです。
詳しそうな人に任せるだけでは、担当者も困ります。本人は何をゴールにすればいいかわからないまま、「なんでも屋」として使われ続けることになります。
この記事では、IT担当を兼務させると決めた社長に向けて、担当者に最初の3か月で何をやらせればいいかを具体的にお伝えします。
まず決めること:担当範囲を「3つ」に絞る
IT担当に何でもやらせようとすると、必ず破綻します。最初は範囲を絞ることが重要です。
① 日常のトラブル一次対応
PCが動かない・ネットにつながらない・プリンターが反応しない。こういったときに「まず見てみる」役割です。すべて自分で解決する必要はありません。「状況を確認して、外部の業者や支援者に正確に伝える」だけでも、大きな価値があります。
② ソフト・機器の管理と記録
社内にどんなPCが何台あって、どんなソフトのライセンスが何本あるか。これを把握している人が一人いるだけで、会社のIT管理は大きく変わります。台帳は簡単な表で十分です。
③ 社内のIT窓口になる
社員からのIT相談を一度この担当者に集める。外部のIT会社や支援者とのやり取りもこの担当者を通す。「IT関係はまず○○さんに」という流れができると、社長への問い合わせが激減します。
📌 この3つだけを最初のミッションに
慣れてきたら少しずつ範囲を広げれば十分です。最初から全部やらせようとしないことが、IT担当育成を成功させる最大のコツです。
最初の3か月でやらせること
第1か月:現状の棚卸しと「聞かれる窓口」になる
まず社内のIT資産を把握することから始めます。PCの台数・メーカー・購入時期、使っているソフトとライセンス数、インターネット回線の契約先。これを一覧にまとめるだけで十分です。
同時に、「IT関係の相談はまず○○さんへ」と社内に周知します。担当者が社内の窓口として認知されることが、この時期の最大のゴールです。
第2か月:パスワード・バックアップ・ソフト管理を整理する
パスワードがどこに保管されているか、バックアップが正しく動いているか、使っていないソフトのライセンスが残っていないか?こういった「管理されていないIT資産」を整理します。
難しい作業ではありません。現状を確認して、一覧にまとめるだけです。ただ、やっている会社とやっていない会社では、トラブル時の対応速度がまったく変わります。
第3か月:トラブル記録と社内ルールを1枚にまとめる
B-30でもお伝えしましたが、トラブルの記録は必ず残しましょう。日付・誰が・どんな症状で・どう対応したか。この記録が3か月分積み重なると、「うちでよく起きるトラブル」のパターンが見えてきます。
さらに、よくあるトラブルへの対処法を「社内ルール1枚」にまとめます。「まずこれを試す」「ここに連絡する」という手順が1枚あるだけで、担当者が不在のときでも対応できるようになります。
PC・ソフト・回線を一覧にまとめる。「IT相談は○○さんへ」を社内に周知する。
パスワード・バックアップ・ライセンスの現状を確認して一覧化する。
トラブル記録を積み上げ、よくある対処法を社内ルール1枚にまとめる。
社長がやること:権限・予算・逃げ道を与える
IT担当の兼務がうまくいかないもう一つの理由は、社長が担当者に「権限」と「予算」を与えていないことです。
担当者が「このソフトを更新したほうがいい」と思っても、決裁権がなければ動けません。「まず5万円以内の判断は担当者に任せる」といった目安を決めておくだけで、現場の動きが大きく変わります。
また、「全部自分で解決しなくていい」という逃げ道も重要です。わからないことは外部に聞いていい、業者に連絡していい。そのことを担当者に明示してください。「詳しくないといけない」というプレッシャーが、担当者を追い詰めます。
当社がお付き合いしている会社では、必ずIT担当の窓口になる方がいらっしゃいます。社長ご自身だったり、専務さん(社長のお子さん)だったり、パソコンが得意な番頭さんだったり。会社によってさまざまです。
日常のやり取りはその窓口担当者と私の間で完結します。機器の不具合・ソフトの設定・日常的なトラブル対応は、担当者を通して進めます。社長のお手間はとりません。
ただし、必要なIT機器の金額が大きかったり、経営判断が必要な場面では、私から直接社長にご相談します。社長が判断すべきことは社長に、現場で完結することは担当者に。この役割分担ができると、社長の負担がぐっと減ります。
IT担当の育成は、「詳しい人を探す」ことではありません。「何をやってもらうかを決めて、動ける環境を整える」ことです。その整備こそが、社長の仕事です。
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IT担当がうまく育つ会社には、共通点があります。社長が「任せた」と言い切っていることです。「何かあれば私に報告して」ではなく、「日常のことは全部任せる。大きな判断のときだけ私に言いに来て」。そう言い切れる社長の会社では、担当者が自分で考えて動くようになります。
逆に育たない会社は、社長が細かく口を出してしまいます。担当者は「どうせ社長が決める」と思うと、考えなくなります。これはITに限った話ではありませんが、IT担当の育成では特に顕著に出ます。
研修でどれだけ知識を詰め込んでも、「任せてもらえる環境」がなければ育ちません。逆に言えば、環境さえ整えれば、思ったより早く「IT、任せておいて」と言える人が育ちます。社長の覚悟が、担当者の成長を決めます。
当社でも、担当者と一緒に現場で動きながら研修を進めることがあります。知識を教えるより先に、「この人となら一緒にやれる」と担当者が思えるかどうか?それが一番大事だと、25年の現場で感じています。
この記事のまとめ
- IT担当の兼務がうまくいかない原因は「何をやるか」を決めていないこと
- 最初の担当範囲は「トラブル一次対応・機器管理・社内窓口」の3つに絞る
- 3か月で棚卸し・整理・記録の仕組みをつくる
- 社長は権限・予算・逃げ道を与えることが仕事
- 窓口担当者がいると、社長の手間が大きく減る