B-24:給与計算・勤怠管理のシステム化で何が変わるか? —総務担当がいない会社のための選び方と費用感
タイムカードのままで良いか?
タイムカードを使っている会社が、勤怠管理・給与計算のシステム化を検討するとき、何が変わって何が変わらないのか。コストの正直な比較と、総務担当がいない会社のための選び方を整理します。
「給与計算、毎月ヒヤヒヤしながらやっています」
こんな言葉を経営者の方からよくお聞きします。社員数が少ない会社では、給与計算を経営者自身や総務兼任のスタッフが担当していることが多い。タイムカードを見ながら手で集計して、Excelに入力して、給与明細を作る。慣れてしまえば回るのですが、ミスが怖いし、担当者が変わったときの引き継ぎも不安です。
一方で、「システムを入れるほどでもないかな」という感覚もよくわかります。社員が5人以下であれば、タイムカードと手入力で十分まわっている会社も実際にあります。
この記事では、タイムカードを使っている会社を念頭に、「本当に変える必要があるのか」という判断の基準から、変えるとしたら何をどう選べばいいかまでを、正直にお伝えします。
タイムカード、まだ使っていますか?何が問題で、何が問題でないか
社員数が少なければ、タイムカードで十分な場合もある
最初に正直に言います。社員数が少ない会社では、タイムカード+手入力で問題なくまわっているケースが多いです。
タイムカードには、見落とされがちな利点があります。それは「目で見て確認できる」ことです。打刻された時刻を自分の目で確かめながら集計する作業は、単なる手間ではなく、ミスや異常に気づく確認プロセスとしても機能しています。システムが自動集計してくれるからといって、それが必ずしも正確とは限りません。最終的な確認は人間がやる必要があります。
社員数がおおむね5人以下で、月末の集計に30分〜1時間程度で終わっている会社は、現時点でシステム化を急ぐ必要はないかもしれません。「困っていないならまず変えない」という判断も、立派な経営判断です。
タイムカードの「本当の問題」は集計と連動にある
では、どういう状況になったら変えることを考えるべきか。タイムカードの本当の問題は、次の2点に集約されます。
- 集計に時間がかかるようになってきた:社員数が増えるにつれて、月末の手入力作業が重荷になってくる
- 給与計算ソフトと連動できない:タイムカードは「紙に時刻を印字するだけ」の機械です。データとして出力できないため、給与ソフトへの入力は毎月手作業になります
特に2点目は見落とされがちです。「タイムカードがあるから勤怠は管理できている」と思っていても、そのデータを給与計算に活かすためには毎月必ず手入力が発生します。社員が10人を超えてくると、この手間が無視できないコストになってきます。
📌 ポイント
一部の打刻機メーカーは専用ソフトでCSV出力できる機種を販売しています。そのCSVを給与ソフトに取り込む迂回ルートもあります。ただし対応機種・対応ソフトが限られるうえ、取り込み作業が毎月発生するため、根本的な解決にはなりにくいのが実情です。
タイムカードとクラウド勤怠アプリ。コストと手間を正直に比較する
月額費用だけで比べると見えない「手入力コスト」の話
「クラウド勤怠は月額費用がかかるから、タイムカードのほうが安い」と思われがちです。確かに月額費用だけを見ればそうです。しかし、タイムカードには「見えにくいコスト」があります。毎月発生する手入力・集計の時間です。担当者が月末に2〜3時間かけて集計しているとしたら、それは人件費として実在するコストです。その時間を別の仕事に使えるとしたら、クラウド勤怠の月額費用は「節約」と見ることもできます。
| 項目 | タイムカード | クラウド勤怠アプリ |
|---|---|---|
| 初期費用 | 打刻機:1〜3万円程度 | 基本ゼロ(業者に設定を頼む場合は数万円) |
| 月額費用 | ほぼゼロ(用紙代のみ) | 200〜600円/人程度 |
| 集計作業 | 手入力(毎月発生) | 自動集計 |
| 給与ソフト連動 | 基本✕ | ◎(主要ソフトと連携) |
| 法改正対応 | 自分で調べて対応 | アップデートで自動対応 |
| 高齢スタッフへの対応 | ◎ 抵抗感が低い | △ ICカード打刻型なら比較的馴染みやすい |
10人規模で試算するとどうなるか
社員10人の会社で比較してみます。
月額費用:ほぼゼロ。
ただし月末に担当者が2〜3時間かけて集計・入力。時給2,000円換算で月4,000〜6,000円分の人件費が発生しています。
月額費用:2,000〜6,000円(200〜600円×10人)。
集計はほぼ自動。担当者の月末作業は確認のみ、30分以内に短縮できるケースが多い。
金額だけを見るとほぼ同じです。ただし、クラウド勤怠に移行すると担当者の時間が空く分、別の仕事に充てられます。「コストが増える」ではなく「時間を買う」という捉え方が実態に近いです。
「スマホ打刻に変えたいが、高齢のスタッフが使えるか不安」というご相談もよくあります。この場合、ICカード打刻型のクラウド勤怠サービスを選ぶと、タイムカードに近い操作感で移行できます。
ICカード(SuicaやPASMOなどの交通系ICカードが使えるサービスもあります)をリーダーにかざすだけで打刻完了。スマホの操作が苦手なスタッフでも、ほぼ説明なしで使い始められます。バックヤードでのデータ集計はクラウド上で自動処理されます。
給与計算ソフトの選び方:総務担当がいない会社向け
顧問の社労士・税理士が使っているソフトを先に確認する
給与計算ソフトを選ぶとき、最初にやるべきことがあります。顧問の社会保険労務士(社労士)や税理士に「どのソフトを使っていますか?」と聞くことです。
顧問先の士業と同じソフト、または連携できるソフトを使うと、月次の確認作業や年末調整などのやり取りがスムーズになります。逆に、バラバラのソフトを使っていると、データの受け渡しが毎回手作業になる場合があります。
📌 ポイント
顧問の士業がいない場合は、次項のシェア上位3サービスから選べば大きく外れることはありません。無料トライアルを使って、実際に触ってから決めることをお勧めします。
シェア上位3サービスと費用感
顧問の士業がいない場合は、次項のシェア上位3サービスから選べば大きく外れることはありません。無料トライアルを使って、実際に触ってから決めることをお勧めします。
中小企業向けのシェアで上位。給与・勤怠・経費・会計をシリーズで統一できる。バックオフィス全体をまとめたい会社に向いている。月額費用は従業員数によって変動。
freee会計と連携することで、給与から会計まで一気通貫で管理できる。UIがわかりやすく、IT経験が少ない担当者でも使いやすいと評判。小規模事業者向けのプランあり。
弥生会計をすでに使っている会社には導入しやすい。買い切り型から移行してきた会社に馴染みがある。税理士・社労士の利用実績も多く、顧問先との連携がしやすい。
なお、勤怠管理に特化したサービスとしては「KING OF TIME」(55,000社以上導入)や「ジョブカン勤怠管理」なども広く使われています。給与計算は既存のソフトを使いながら、勤怠管理だけを先にクラウド化したい場合はこちらも選択肢になります。
この記事のまとめ
- 社員5人以下でタイムカードがうまくまわっているなら、急いで変える必要はない
- タイムカードの本当の問題は「給与ソフトと連動できない」こと。手入力が毎月必ず発生する
- クラウド勤怠への移行コストは「時間を買う」感覚で捉えると判断しやすい
- 高齢スタッフが多い会社はICカード打刻型を選ぶと移行の摩擦が少ない
- 給与ソフトは顧問の社労士・税理士が使っているものを先に確認してから選ぶ
- シェア上位はマネーフォワード・freee・弥生。まず無料トライアルで触ってみる