B-22:電子帳簿保存法、うちの会社は何をすればいい? —クラウド会計と合わせた実務対応まとめ
電子帳簿保存法への対応法
電子帳簿保存法で「うちの会社が本当にやるべきこと」を、会社の規模・使っている会計ソフト別に整理します。難しい制度の話より、明日から動ける実務の話を中心に。会社の規模・使っている会計ソフト別に整理します。
「電子帳簿保存法、なんか対応しないといけないって聞いたけど、正直よくわからなくて…」
そういう経営者の方、とても多いです。顧問税理士から「対応してください」と言われたものの、何をどこまでやればいいのかピンとこない。そんな状態でこの記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。
結論から言います。ほとんどの中小企業にとって、電子帳簿保存法への対応は「特別なシステムを買わなくても、今あるパソコンで対応できます」。ただし、やるべきことを正しく理解しておく必要があります。
この記事では、制度の仕組みをわかりやすく整理した上で、会社の規模や使っている会計ソフト別に「何をすればいいか」を具体的にお伝えします。
「電子帳簿保存法って、もう対応しないといけないの?」
2024年1月から何が義務になったのか、3分で整理する
電子帳簿保存法は、帳簿や書類をデータで保存する際のルールを定めた法律です。2024年1月から、この法律の中の「電子取引データ保存」という部分が、ほぼすべての事業者に義務化されました。
電子帳簿保存法には、大きく3つのルールがあります。
パソコンで作った帳簿や書類をデータで保存するルール。任意対応で、紙のままでもOKです。
紙で受け取った書類をスキャンして電子化するルール。任意対応で、紙のまま保存しても問題ありません。
メールやWebでやり取りしたデータをデータのまま保存するルール。全社対応が必須です。
今すぐ対応が必要なのはここだけです。①②は「やりたい人がやる」任意の制度ですので、慌てて準備する必要はありません。
「うちは関係ない」が一番危ない理由
「うちは現金商売だから関係ない」「まだ紙でやっているから大丈夫」と思っている経営者の方もいらっしゃいます。ところが実際には、多くの会社が気づかないうちに電子取引をしています。
電子取引に該当する具体例です。思い当たるものがあれば、その会社は対応が必要です。
- 取引先からPDFの請求書をメールで受け取っている
- 自社がExcelや会計ソフトで作った請求書をメールで送っている
- Amazon・楽天・モノタロウなどのネット通販で仕入れている
- クレジットカードやネットバンキングの明細をWebから取得している
- 契約書をメールやクラウドサービスでやり取りしている
- PayPayなどのスマホ決済を使っている
いかがでしょうか。「紙中心の商売」であっても、仕入れがAmazonやモノタロウなら、その購入データは電子取引に該当します。まず自社にどんな電子取引があるかを棚卸しすることが、最初のステップです。
電子取引データ保存、実際に何をすればいいか
では③の電子取引データ保存、具体的に何をすればいいのでしょうか。結論は、以下の3つをセットで行うことです。
メール添付で届いた請求書はPDFのままフォルダへ。AmazonやモノタロウはWebページからPDFで保存します。なお、紙で受け取った書類は現行法上、紙のまま保存しておけば問題ありません。ただし、複合プリンターでスキャンしてPDF化しておくと、電子データとまとめて一覧でき、管理がぐっと便利になります。フォルダは「年度 → 月 → 取引先」などわかりやすい構成にしておきましょう。
保存するPDFのファイル名を規則的にする必要があります。例えば「20240401_株式会社〇〇_110000」のように、日付・取引先名・金額を入れたファイル名にします。このルールを社内で統一して運用することが重要です。
「保存したデータを勝手に書き換えたり消したりしない」というルールを文書化したものです。国税庁のホームページにひな型がありますので、会社名と担当者名を入れるだけで大体完成します。印刷して保管しておけばOKです。
電子データは紙と違い、後から書き換えることが技術的には簡単にできてしまいます。そこで「この会社では保存したデータを正当な理由なく変更・削除しません」というルールを明文化した書類を備えておくことが求められています。
難しそうに聞こえますが、実態は「社内ルールを1枚の紙に書いて保管しておく」だけのことです。国税庁の公式サイトからひな型(Wordファイル)をダウンロードして、自社の情報を入れて印刷するだけで完成します。税理士に相談すれば5分で終わります。
うちは取引が少ないから、エクスプローラーの検索で十分ですか?」
よく受ける質問です。
答えは「会社の規模と取引数によります」。
電子帳簿保存法では保存したデータを「検索できる状態」にしておく必要があります。ただし、売上高が5,000万円以下の会社は、この検索要件が大幅に緩和されており、ファイル名のルールさえ守ればエクスプローラーの検索で実務上は問題ありません。
会社の規模と取引数に応じた現実的な対応方法を整理すると、以下のようになります。
会社の規模・取引数別:どの方法で対応するか
フォルダ保存+Windowsエクスプローラーで対応OK。
Windowsの標準エクスプローラーは検索が遅く、複合条件での検索が苦手です。「Everything」という無料のファイル検索ソフトを入れると、ファイル名の検索が瞬時にできるようになります。取引先名・日付・金額での絞り込みも快適で、会計ソフトを新たに導入しなくても検索要件を満たせます。導入も簡単で、ITが苦手な方でも使えます。
ファイル検索ソフト「Everything」の導入がおすすめ。
無料で使えて、ファイル名の検索が瞬時にでき、取引先名・日付・金額での絞り込みも快適です。新しいシステムを導入しなくても検索要件を満たせます。
会計ソフトの証憑管理機能を活用する。
取引数が多くなってくると、フォルダ管理だけでは手間がかかりすぎます。この場合は、使っている会計ソフトに証憑(請求書・領収書)を取り込んで管理する機能があるか確認しましょう。弥生会計なら「スマート証憑管理」、freeeやマネーフォワードはクラウド上でデータを管理する機能が標準搭載されています。
会計ソフト別:対応できる範囲とできない範囲
弥生会計・勘定奉行など「買い切り型」ソフトを使っている場合
弥生会計やPCAクラウド、勘定奉行など、昔から使っているパッケージ型の会計ソフトをお使いの会社は多いと思います。これらのソフトは帳簿の作成には対応していますが、電子取引データの「保存・検索」については、ソフトのバージョンや契約プランによって対応状況が異なります。
弥生会計の場合、「スマート証憑管理」というオプション機能(あんしん保守サポート加入者は無料)を使うと、電子帳簿保存法の要件を満たした証憑管理が可能です。ただし、会計データとの自動連携はないため、あくまで「データを保管・検索する場所」として使うイメージになります。
まず顧問税理士か、ソフトのサポート窓口に「電子帳簿保存法の電子取引データ保存に対応していますか?」と確認してみてください。バージョンアップや設定変更だけで対応できる場合もあります。新しいシステムを導入する前に、今あるソフトで対応できないか確認するのが先です。
freee・マネーフォワードなど「クラウド型」を使っている場合
freeeやマネーフォワードなどのクラウド会計ソフトは、電子帳簿保存法への対応が比較的スムーズです。どちらも証憑のアップロード・管理機能を標準で持っており、銀行口座やクレジットカードとの連携で取引データを自動取得することもできます。
ただし「クラウド会計を入れれば全部解決」ではありません。Amazonやモノタロウの購入データ、メールで届く請求書など、自動取得できないデータは手動でアップロードする作業が発生します。「どこまで自動化できて、何が手作業になるか」を事前に把握した上で運用ルールを決めることが重要です。
📌 どちらを使っていても、顧問税理士との確認は必須
電子帳簿保存法への対応は、税務申告と密接に関わります。「うちの会社の場合、どこまで対応すればいいか」は、会社の規模・業種・取引の種類によっても変わります。
システムや運用方法を決める前に、一度顧問税理士に現状を共有して方針を確認することを強くおすすめします。「何か買わないといけないですか?」という質問だけでも、方向性が定まります。
MM総研の調査によると、弥生・freee・マネーフォワードの3社でクラウド会計ソフト市場の約94%を占めているそうです。面白いのは、個人事業主と法人で勢力図がまったく異なること。個人事業主では弥生が約55%と圧倒的首位ですが、法人向けになるとfreeeが約32%でトップ、マネーフォワードが約19%、弥生が約15%と順位が入れ替わります。「個人のときは弥生だったから法人も弥生」とは限らないのが、会計ソフト選びの面白いところです。
ただ、私が25年間支援現場で見てきて感じるのは、「どのソフトを使っているかより、自社の取引をきちんと把握しているかどうか」の方がずっと大事だということです。高機能なソフトを入れても、電子取引の棚卸しができていなければ意味がない。逆にフォルダ管理でも、ルールを守って運用できている会社は強い。ソフトは手段であって、目的ではありません。
この記事のまとめ
- 対応が必須なのは「③電子取引データ保存」だけ。①②は任意です。
- まず自社にどんな電子取引があるかを棚卸しするところから始める。
- 基本の対応は「フォルダ保存+ファイル名ルール+事務処理規程」の3点セット。
- 売上5,000万円以下の会社は検索要件が緩和されており、エクスプローラー管理で実務上OK。
- 年商数億円・取引数が少ない会社は、無料の「Everything」で検索性を補うのがおすすめ。
- 取引数が多い会社は会計ソフトの証憑管理機能を活用する。
- システムを決める前に、顧問税理士への確認を忘れずに。